あのね仙台牛

Vol.6

一年間フル回転!
「一貫農家」って何だろう?

繁殖と肥育、それぞれのこだわり

「一貫農家」って耳にしたことがありますか?
繁殖から出産、生まれた子牛を生後10ヶ月までの飼養するのが繁殖農家。その子牛を買って出荷までの約20ヶ月間育てるのが肥育農家です。「一貫農家」は、その両方を行う生産者のことを言います。
一口に「一貫農家」といっても、生産者の得意分野やこだわりによって、繁殖と肥育のバランスや飼養の仕方は様々。それぞれに独自の工夫を凝らしています。
「肥育は良質な餌をたくさん食べてもらって体を大きくすることが重要。でも繁殖牛は太らせ過ぎるとうまく繁殖できない。バランスが大事なんです。うちでは繁殖と肥育の担当を分けていて、繁殖部門は子牛の段階で出荷しますし、肥育部門は他から子牛を買ってきて育てます」と話すのは登米市の渡辺一憲さんです。

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生後10ヶ月程度の子牛。
牛の健康と環境のために、日々全力

「一貫農家」ならではの苦労点はありますか?
「大変なことばかりです(笑)牛のお産はいつ起きるかわからないし、昨日もあったんですが、子牛が大きくて大人二人がかりで引っ張りました」と話すのは大崎市の遠山和さん。出産は神経も体力も使いますが、命の誕生はやり甲斐のある瞬間でもあります。
春に牧草の種を蒔いて稲の田植え、夏に牧草の刈り取りをして、秋に稲刈りし、牛にワラあげの作業。その間も牛の世話や繁殖もあるため、一貫農家さんは一年通して大忙しです。
「うちは牛の数が多いので、地元の別農家さんと提携して、豊富なワラを提供してもらっています。かわりに牛糞を堆肥として提供しています」と話す遠山さん。地元産の餌で大事に育てられた牛の排泄物は、田んぼの肥料となり、地元の米作りに役立てられます。
牛は地域の「資源循環型農業」の大切な担い手であり、SDGs「No.12つくる責任つかう責任」の実現にも一役買っているのです。

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米農家さんから提供していただく良質なワラ。
手間ひまで生まれる喜びが、SDGs「No.8働きがい」に

一方、大崎市で繁殖牛約70頭、肥育牛約100頭を飼養する泉智宏さんは「一貫農家」ならではのやり甲斐についてこんなふうに話してくれました。
「繁殖と肥育の両方をやるのは大変だけれど、誕生から最後まで世話ができるので思い入れが強いですね。小さい時に体調を崩しやすかった子牛も、一生懸命手をかけてあげると立派な仙台牛に育ってくれるんです。お客様に『いい枝肉だったよ』と喜んでもらえたと聞くと『ああ、良かった』、頑張った甲斐があるなと感激しますね」。

農家の連携が美味しさを育てる

「やっぱり美味しいものを食べている牛が一番美味しいです。宮城のきれいな水で丁寧に育てた稲ワラを食べて、手間をかけて育てた仙台牛はやっぱり美味しい。最近は、人間が食べても美味しい宮城米を食べさせる工夫が実って、脂がさらに美味しくなっています」と話すのは栗原市の鈴木貴秀さん。繁殖と肥育、そして地元の稲作農家が、SDGs「No.17」のパートナーシップを発揮することで、仙台牛の美味しさは日々進化し続けているのです。

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宮城県の稲ワラで育つ仙台牛。