食肉の豆知識

食肉がわかるQ&A

Q.日本人は遺伝的に糖尿病になりやすいので肉類の摂取を控えたほうがいいの?

この考えは、とんでもない単純ミスによる誤りだったのです

20年間、そのように伝えられてきました。その元となっているのが1989年の井村裕夫氏の論文で、「糖負荷試験でのインスリン分泌量が米国白人に比べて日本人は少なかった」というものです。糖負荷試験とは糖尿病の精密検査で、一定量の糖質を含む飲み物を飲んだ後の血糖値やインスリン量を測定する検査です。井村裕夫氏は「日本人は欧米人に比べてインスリン分泌量が少ないので、糖尿病になりやすい」としていました。

しかし、米国白人のデータはDe Fonzo RA の論文に書かれていますが、糖負荷糖量としては100gを使っていました。一方、井村裕夫氏のデータは75g の糖負荷で得られたものでした。つまりインスリン分泌量の違いは、人種の違いではなく、糖負荷量の違いだったのです。20年間も間違った知識を普及させた責任は、井村裕夫氏だけではなく、元の論文を読まずに引用を続けてきた糖尿病専門医にもあります。

国により糖尿病の発生率に違いはありますが、その原因は人種や遺伝子ではなく、生活習慣の違いです。それを示す証拠がほかにもあります。まず、人種によりインスリン分泌能の違いを示す遺伝子は未だに見つかっていません。

また、米国の原住民でピマ・インディアンがいますが、昔からの生活習慣を続けている集団には糖尿病はほとんど見られませんが、保護区で生活するようになった集団では糖尿病が成人の40%前後に広がりました。保護区の生活では食料などが与えられて、糖質摂取量が増え、運動量は減っているようです。